糖尿病と眼
糖尿病と眼。あまり関係ないと思われがちですが、失明の原因の第一位は糖尿病です。早期発見、早期治療が大切ですので既にまたは最近糖尿病と診断された方は受診をお勧めします。
糖尿病の3大合併症
1.腎臓の障害
腎臓の尿をつくる機能が低下し、体の老廃物が除去できなくなります。
2.神経の障害
末梢神経に障害が起こり、手足の感覚が鈍くなったり、しびれや痛みを感じたりします。
3.目の障害
目の網膜の毛細血管が詰まったり、高血糖による末梢神経障害や代謝異常が起こります。
自覚症状がほとんどないものもあり、また末梢神経障害を起こした糖尿病患者さんでは痛みを感じない場合があるため注意が必要です。(※ずっと見える情報局より)
糖尿病網膜症
網膜に障害が起こり、視力が低下したり失明したりするおそれもあります。
この障害の特徴として
・ 初期~かなり進行するまで、ほぼ無症状で自覚が起きにくいです。
・ 日本人の糖尿病患者のうち糖尿病網膜症にかかっている割合は、
約15%とされ、約140万人が糖尿病網膜症にかかっていると推定されています1)。年間約3,000人の失明を引き起こし2)、成人の失明原因の第2位、50〜60代では第1位!
1)OCULISTA 2013; 8:1-5 2)岡畑純江ほか.月間糖尿病 Vol.6 No.6(通巻64号) 2014年7月号 17p
・ 糖尿病網膜症と診断された方は合併症として黄斑浮腫にも注意が必要で、黄斑浮腫が生じると初期段階の網膜症でも視力障害が発生します。
白内障
目の中の凸レンズの役割をしている水晶体が白く濁る病気です。血糖値レベルが高いほど白内障を発症しやすく、糖尿病があるとより若くして進行してきます。主な症状は1.まぶしい 2.物がぼやけて見える 3. 昼盲(明るいところで見えにくい)4.単眼複視(片目で見ても物が2つに見える)
角膜障害
目の最も前にある透明な膜が角膜です。糖尿病になると涙の分泌が少なくなったり、角膜の表面が傷つきやすくなったりするため、角膜の炎症やドライアイなどが起こります。
血管新生緑内障
網膜の血管が詰まる状態が進むと、目の前の方に新しい血管が出てきます。このために眼圧が高くなって視野障害を引き起こすのが血管新生緑内障で、失明に至ることもあります。
屈折・調節異常
血糖値は水晶体の屈折に影響しているといわれています。そのため、血糖値が高い状態が続くと屈折・調節異常が起こり、近視や遠視が進んだり、老眼が早く出ることがあります。
糖尿病網膜症と糖尿病黄斑浮腫
糖尿病により網膜の血管の障害が進むと、その影響は大きく二つに現れます。
糖尿病網膜症
眼の網膜全体の血管が、糖尿病による高血糖に長期間さらされることで壊れて、最終的に失明する可能性のある病気です。糖尿病網膜症は網膜の血管が徐々に壊れていくことに伴って以下の3段階を経て進行します。
1)単純網膜症
長い間、濃度の高い糖にさらされることで毛細血管が壊れ始め、コブができたり(毛細血管瘤:もうさいけっかんりゅう)、出血したりします(点状出血)。また、壊れた血管から血液や血液の成分(たんぱくや脂肪など)が漏れ出します。
2)増殖前網膜症
血管の障害が繰り返されることで血管壁が厚くなって、血管が狭くなったり、詰まったりして(血管閉塞:けっかんへいそく)、血液が網膜に流れなくなります(虚血:きょけつ)。
3)増殖網膜症
虚血になると、網膜では新しい血管が作られ(新生血管)、硝子体(しょうしたい)まで伸びて、血液や酸素を取り込もうとします。新生血管はもろく、壊れやすいので、硝子体で出血を起すこともあります。また、硝子体内にできた増殖膜が収縮して硝子体と網膜を癒着させ、網膜を引っ張り網膜剝離(もうまくはくり)を引き起こすこともあります(牽引性【けんいんせい】網膜剥離)。
糖尿病黄斑浮腫
もう一つは糖尿病黄斑浮腫です。「黄斑」は、「網膜の中でも最も視力の鋭敏な部分」で、網膜の血管にコブができたり、血管から血液中の成分がもれだし、それが網膜内にたまっている状態が糖尿病黄斑浮腫です。網膜内に血液中の成分がたまっているため、ものの詳細を見分けたり、文章を読んだりするのにとても大切な場所、「黄斑」がむくんでしまい、ものが見えづらくなります。
※糖尿病黄斑浮腫ドットコムより
糖尿病網膜症と糖尿病黄斑浮腫の治療
当院では患者様1人1人の状態に応じて大学病院と同等の設備や薬剤を採用しています。
また、疾患の状態に応じて大学病院への紹介をさせていただくことができます。
糖尿病網膜症の治療
1.正常~単純網膜症(早期の網膜症)
血糖コントロールや、高血圧の治療など内科的治療を行い、状態によってはレーザー光凝固療法を行います。それによって、病気の進行を阻止したり遅らせたりすることができます。
2.増殖前網膜症~増殖網膜症(進行した網膜症)
増殖前網膜症と早期の増殖網膜症の時点で、失明予防の目的でレーザー光凝固療法を行うことによって、病気の進行を阻止したり遅らせます。さらに病気が進行して、網膜剥離や硝子体出血が起きた場合には、硝子体手術が行われます。
黄斑浮腫の治療
1)薬物による治療
・VEGF阻害薬:血管からの血液や血液成分の漏れを抑制する薬を眼内に注射します。
・ステロイド薬:炎症を抑え、水分の漏れを抑制する薬を眼内に注射します。
2)外科的な治療法
・レーザー光凝固術:水漏れを起こしている悪い血管を焼き固めて、視力低下を防止する治療法です。
・硝子体手術:硝子体を切除することにより、網膜への悪影響を改善する手術です。
秋山眼科医院の設備
OCT(三次元画像解析装置)
糖尿病網膜症、中心静脈分枝閉塞症、黄斑円孔、黄斑前膜等、加齢性黄斑変性症、緑内障などを調べる装置です。
当院ではカールツァイス社のCirrus(シラス)という機種を使用しています。
マルチカラーレーザー光凝固装置
新生血管の発症を防ぎ、網膜症の進行を防ぐための医療機器です。
当院ではCOHERENT社のNOVUS OMNI (ノーバスオムニ)を使用しています。
手術用顕微鏡
白内障、緑内障など様々な眼科の手術時に使用される医療機器です。
当院ではカールツァイス社の顕微鏡を使用しています。